第5章 中国人妻をめぐるトラブル[5]

@筆者:五味洋治プロフィール [ 2011年 7月 21日 ]

履歴書の嘘

ポータルサイト・yahooの掲示板で、国際結婚に関する掲示板を運営している男性秋本一郎さんと話す機会があった。日本の東北地方に住んでいる。
彼はハルピンにお見合いの旅行に行き、そこで知り合った女性と結婚した。
履歴書には彼女は「学校の先生」となっていた。結婚後、秋本さんは、彼女の話につじつまの合わないところがあり、学校の先生をしたことなどないことを知る。秋本さんに彼女を紹介した日本の業者に問い合わせると彼女の経歴について、ほとんど何も知らなかったという。
これが日本の業者による「中国側業者への丸投げ」の実態である。
費用を安く抑えるために、自分たちでは何もせず、中国側で人を集める人間に女性のプロフィールに関する任せっきりにする。男性は8日間中国に滞在し、4日目で結婚を決意した。この間に、相手の嘘を見抜くのはかなり難しい。
履歴書の一部を見たが、明らかに中国人が書いたとおもわれる、たどたどしい日本語だった。一見、彼女が書いたとも考えられるが、この場合は日本留学の経験がある中国側業者が書いたのではないかと推測される。
この履歴書の最後には「私と結婚すれば離婚はありません」と付け加えてあった。
しかし、この男性と彼女は日本に来てから離婚した。彼女が秋田の生活をいやがり、都会に出たがったことが原因になった。あくまで秋本さんの説明である。
ただ彼女は、日本人と離婚した途端に、日本に滞在できるビザの期限切れという爆弾を抱えることになる。
日本国籍か永住権を持つ男性と結婚しなければ、帰国せざるをえなくなるが、「彼女は池袋で水商売をしている」(秋本さん)という。
もともと、手引きする男性がいたのか、新たな男性を見つけたのか。なんらかの方法で滞在を続けているのだろう。
先日、私がある日中のお見合いパーティで言葉を交わした30代の大連出身の中国人女性は「中国には絶対に帰りたくない。日本人と結婚して、ビザをもらい、遊び続けたい」と悪びれずに私に話した。彼女は日本に来てから、すでに7回の離婚歴があるという。

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反業者婚

もちろん、彼女たちにも言い分がある。結婚する日本の男性が自分の条件を美化したり、強制的に家に閉じこめたり、中には本当に暴力を振るう男性もいる。
国際結婚の紹介業者はもっと責任を持て、と訴えている人がいる。小菅清さんだ。関東にある学校の先生である。そのかたわら、自分のホームページや著作を通じて、国際結婚の問題点を指摘し続けている。
日中結婚で、トラブルになったケースをたくさん教えてもらった。業者が介在しないケースも少なくない。
ある男性は日本のラーメン店で中国人男性と知り合った。
その中国人男性の彼女の友達が、日本人と結婚したがっていると聞き、北京に行って短時間交際する。結婚を決めたがその後、いろいろと大変な額のお金が必要になり、小菅先生に相談をした。男性は結婚はしたが、同居していないという。女性が別の場所で暮らしたいと言っているからだそうだ。
別の男性は、結婚直後に妻が失踪。突然弁護士から離婚に同意するよう手紙がきたという。もちろん結婚のことだから、何が理由だったのか当事者にしか分からない。日本人だってうまくいかないんだから、国際結婚はもっとリスクが伴う。
小菅さんは言う。
国際結婚を考える人はもともと気が弱いタイプが多い。だから十分考えないうちに相手のペースにはまって、結婚してします。
結婚生活がおかしくなった後も、何も言えないことが多い。悪質業者は、そういう気弱な、しかも立派な肩書きをもった人を狙う。世間体があって、後で騒げないからだと断じる。
いくつかの業者の契約書も見せてもらった。ある業者の契約書は「次の条件に該当する場合は結婚破綻の責任が負えない」と書いてある。その中に「マザコン」というものあった。
「こんな曖昧な条件を受け入れてしまっていては、たとえ裁判になっても男性側は勝てません。早く諦めて、損害を少しでも少なくすることです」と小菅さんは言った。
すべての国際結婚がこうだとは言わないが、落とし穴の多い世界ではある。
ほとんどの中国女性に、こんなことはないがしかし、ネットでたまたま見つけた素性の分からない業者に依頼して現地に行き、トラブルに巻き込まる人は結構いるのだ。
小菅さんが、以前雑誌に書いた国際結婚を警告する記事のタイトルは、「中国人花嫁は、中高年をしゃぶる」だった。

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安心な業者を見分けるには

では、安心な業者はどう見分ければいいのか。国際結婚業者が順守しなくてはいけない個人情報保護法や特定商取引法についてホームページなどにきちんと記述しているかどうかだ。
また国際結婚一般に関するデータや、Q&A、業者の顔写真、事務所の電話などを公開しているところは、一応信頼に応えようとしていると考えて良さそうだ。
かつてマスコミの取材に応じて、お見合いの様子などを公開している業者も、責任ある仕事をしていると考えられる。
また、日本での国際結婚紹介業者は、日本ブライダル連盟、日本仲人連盟など仲介業の団体に加盟している。こういった連盟は、仲介業の質の向上のため、研修している。こういった組織のメンバーかどうかも、判断の一つの基準になりそうだ。
実際に紹介を受けた人から、業者の評判を聞くことも大切だろう。
安心できる業者は決して安くない。各種費用を入れて350万円ー200万円程度は普通だ。大切なのは額ではなく料金が透明で、結婚後もアフターサービスをしてくれるかどうかだ。中国人女性は来日直後には言葉が不自由で、行き違いも多い。そういう時、時間をいとわず双方の相談相手になってくれるかどうか、確認した方がいいだろう。
極端な低額で客寄せしているところは、中国側の紹介業者に女性のデータ集めを丸投げしているところが多く、かえって危険といえる。

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専門家の相談の場を

私の友人で東京・八王子に事務所を構える行政書士・社会保険労務士の岡村正人さんは、国際結婚問題に詳しい人だ。
彼が長い間の経験をまとめた、国際結婚に失敗しないこつを教えてもらった。
1お互い相手のことをよく知るまで結婚の約束をしない。
結婚紹介業者などに200万円、300万円支払い、お見合いはたった1回。若くてかわいい女性はどこでももてるはずだ。
なぜ、あなたと結婚したいのかをよく確認する。中国の女性は、中国側の結婚紹介業者に50万円とか150万円とか支払う約束をしており、結局その支払いを日本人男性が払わされるケースが多い。結婚後、中国の実家に毎月の仕送りを求められることも多い。金目当ての女性と結婚しても苦労ばかりしょいこむことになる。見合い後、何度も無料の国際電話等で交際を重ね、何度か会い、相手の性格やお金のことなどもきちんと確認してから結婚する。
2あまり年齢差のある結婚は失敗するケースが多い。
例えば、自分が50を過ぎ、若ければ若いほどいいときれいな女性を追い求めても、そんな結婚は日本人どうしですらうまくいかない。世代間の考え方の違い、趣味の違いなどいわゆるジェネレーション・ギャップがある。相当お金に余裕がある人でなければ、若すぎる女性を満足させることはできない。
3結婚が成立したからといって、入国管理局の配偶者ビザは簡単に出ない。
入管業務に精通し、成功実績の多い申請取次行政書士や弁護士に依頼する。2010年に入ってから、とりわけ中国にいる配偶者を呼ぶ「日本人の配偶者等」の不許可が急増している。おそらく、偽装結婚などで今まであまりにも多くの不正が横行した結果だ。
4言葉(日本語)の壁は厚い。日本語学校に結婚前、結婚後もかなりの会話能力がつくまで通わせる。
日本人どうしですら、今の離婚率は大変高い。夫婦としてお互い心を通わせるのに会話が十分に成立しなければ話にならない。結婚を決意したら、現地の日本語学校や来日後も学校に通わせ、日常生活に不安のない状態にまで日本語能力を高めさせること。それができなければ、夫婦間の会話はおろか、地域にも溶け込めないし、親しい友人も作れない。
5お互いを尊重しあい、困ったときに男性・女性ともに気軽に相談できる組織や専門家を見つけておくこと。
夫婦げんかが全くないというカップルになるまで相当の努力や相手への気遣い、年月を要する。とりわけ、異国に初めてやってきた相手の気苦労は多い。外国人の日本での日常生活上の様々な手助けを行っている市役所の相談
窓口、NPO法人、気軽に相談できる専門家などを見つけておくことだ。

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