第6章 日本社会への順化は可能か[1]
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第6章 日本社会への順化は可能か[1]
ドイツの失敗移民政策の難しさ
国際結婚や、結婚移民というのは、大きくいえば世界が狭くなることだ。それに伴い思わぬ摩擦も生まれてくる。
ちょっと世界に目を移してみよう。欧州連合(EU)は、国同士の結びつきが強まり、移民の流入が激しくなっている。ドイツは、旧西独時代の1961年から労働力不足を補う目的で、近隣のトルコ、ギリシャなどから出稼ぎ労働者を大量に受け入れた。しかし、いずれは帰国するとして、99年に国籍取得条件を緩和するまで「多文化主義」として、積極的な統合政策をとらずにいた。
現在、ドイツの人口8200万のうち約1600万人が移民か外国出身で、イスラム系は約400万人にふくらんだ。しかし、9・11の米中枢テロ以降、イスラム原理主義への警戒心が高まっただけでなく、大量流入してきた移民が自分たちの仕事や年金を奪わうのではないかとの不安が広がり、移民排斥を訴える極右政党の伸張が目立っている。
ドイツのメルケル首相は2010年10月に、「ドイツは移民を歓迎する」と前置きした上で、「多文化社会を築こう、共存共栄しようという取り組みは失敗した。完全に失敗した」と率直に認めたことがある。今後、移民のドイツ語教育に力を注ぐ一方で、ドイツ基本法(憲法)に反するイスラム社会の強制結婚など、伝統的な習慣を規制していく方針だ。
同化重視のフランス
同じEUの国でもイギリスは移民を自国民に統合させることには消極的だ。逆にフランスは、不法移民は帰国させ、定住する移民に対しては徹底的に同化を求めている。
たとえばサルコジ大統領は、少数民族のロマ、このロマの犯罪が増えているという理由で、不法滞在者を一掃すると宣言した。
とりあえず滞在期限が切れたおよそ1000人を本国のルーマニアとブルガリアに送り返した。かつてジプシーと呼ばれ、移動生活者が多く差別や迫害を受けてきた人達だが、容赦ない対応で、国の内外から批判を浴びている。
ロマのフランス移住はロマが多く住むルーマニアとブルガリアのEU加盟が実現し、人の移動が活発化した事が大きい。
移民に対しては、フランス語の習得を義務つけている。
台湾では営利目的の仲介業を禁止
アジアの国ではどうなっているのか。人口2300万人の台湾では、国籍の違う夫婦とその家族を「多元文化」と呼んでいるが、女性保護に重点が置かれている。
政府の統計によると、2009年、外国籍の配偶者は44万1314人となり、もっとも多い中国大陸出身者が全体の64・14%(香港・マカオを含めると67・86%)を占める。9割以上が女性だ。中台関係の深まりとともに、その割合は年々高くなっている。
つぎにベトナム、インドネシア、タイとなっている。結婚全体に占める割合は1992年に31%と最高を記録した。台湾では、台湾人の配偶者となった場合選挙権が持てるため、中国からの政治的影響を懸念した台湾政府が、入国審査を厳しくしたため、中国大陸からの配偶者の割合は減っているが、それでも毎年15%前後となっている。
こういった状況を踏まえ、台湾の立法院(議会)は2007年11月、外国人配偶者や外国人労働者への差別発言や差別的な広告を行ったことが分かれば、最大30、000台湾ドル(1台湾ドル=約3・5円)の罰金を科することなどを定めた改正入国管理法を採決した。
現行入管法では、外国人配偶者は台湾人と離婚した場合、原則出国しなければならないが、改正入管法は、DV(ドメスティックバイオレンス)が離婚理由であり未成年の子どもを養育している場合、台湾に在留し続けることができるとし、保護を手厚くした。
さらに同法は、営利目的による外国人女性と台湾人男性の結婚の仲介を禁止し、仲介業者が広告を出したり仲介料を得たりすることができなくなった。仲介業者は廃業までに1年の猶予期間が与えられており、この期間後も営業を継続した場合、20万〜100万台湾ドルの罰金が科せられる。
ただし、非営利団体が、「純粋に社会サービス」として外国人と台湾人との国際結婚を仲介することは許可される。
また、売春を強要されたり騙されて国際結婚をしたなど人身売買の被害者となった外国人女性は寛大な扱いを受ける、あるいは法律違反を理由に起訴されないことが入管法に盛り込まれた。
障害者、高齢者を食い物・韓国
韓国では身体に障害を持っていても一定の経済的余裕のある人は、中国の朝鮮族(朝鮮系中国人)の女性を妻にもらうことが多い。
2006年2月3日の韓国・聯合ニュースに、関連の記事が出ていた。無資格斡旋業者が、朝鮮族の韓国入国の手段として偽装結婚を盛んに行っている。相手は韓国人の女性から相手にされない障害を持った、年配の男性だ。女性は男性と結婚後、しばらくすると家出して仕事を始める。障害者の男性は、ささやかな希望を踏みにじられるわけだ。
こういった悪徳業者は、韓国では1990年代後半から雨後の筍のように増加した。関連当局によれば95年以後から2004年末まで10年の間、約3万人余りの外国女性が国内に流入したと集計されている。
このように入国した女性らは、結婚できない障害者や老いた未婚男性、農村チョンガー(独身者)らを相手に偽装結婚した後、2年間を法的に夫婦身分を維持すれば韓国国籍を取得できると計算している。
記事によれば、ソウルに居住する朝鮮族の女性張さん(33歳)は、2002年韓国に入国した後、40代の2級聴覚障害者男と結婚した。子供1人を産んで2年間の結婚生活を続け、韓国国籍を取得した後、夫と離婚した。
張さんは電話取材に対し「夫と離婚するのは元から計画していた」「子供は障害者の夫と住んでいる」と打ち明けた。張氏は離婚後の慰謝料で、衣料品店を出す計画も立てた。
空恐ろしくなる話だが、朝鮮族は韓国文化の強い影響を受けており、韓国でも不便なくくらせる。韓国でかせげば、中国では夢にもしなかった大金が手に入る。
その後韓国は、朝鮮族に対するビザを厳格にし、偽装結婚は減少しているという。
たとえばタイの南に位置するカンボジア。カンボジア政府はカンボジア女性と韓国人男性との結婚を規制した。金に任せて結婚させる「人身売買」に近いケースが相次いでいるということらしい。