第5章 中国人妻をめぐるトラブル[2]

@筆者:五味洋治プロフィール [ 2011年 7月 20日 ]

片偽装結婚

ここまで紹介してきたのは、日本人男性も、中国人男性も、完全に結婚や存在しない資格をでっちあげて、日本に入国、大罪するケースだった。
それだけではない。簡単に大金が稼げる日本を目指す女性が、結婚を隠れ蓑にするケースがある。あくまで結婚は偽装。入国後、外国人登録が終われば、すぐさま家を出て働き出すと考え、捨て身で結婚するのだ。
結婚を望む中高年の男性、女性の入国のためのカモにされる。こういう入国目的の結婚を業界では、「片偽装結婚」と呼ばれている。これの原因は、中国側の結婚紹介業者が、女性から取る多額の手数料だ。
国際結婚の場合、中国の現地で女性を集めるブローカーと、日本で男性を集める業者がタイアップする。日本側の業者は、まず、中国への渡航費用や、現地での滞在費などを含めた結婚に必要な費用として80万円〜120万円の比較的低価格ので日本で客を勧誘する。
中国側のブローカーは「日本に行ければいい生活ができる」と甘い言葉で誘って、最低2万元(約30万円)〜5万元の手数料を取る。平均は3万元(約45万円)で、結婚後、夫に請求させ、返金を迫る。あちこちの掲示板に書かれている事例では、150万円の借金があり、結婚後分かったケースもあるようだ。

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複数サイトに同じ女性

中国の業者は、ホームページを持つ日本人の国際結婚業者に、積極的に提携を持ちかけてくる。日本の業者は、できるかぎり多くの女性の情報を載せたいので、応じてしまう。
ところが美人の場合、写真と資料が幅広く出回り、日本の複数のサイトに同じ顔写真が掲載されていることがある。ある日本の仲介業者は、自分のページに掲載していた女性が、他の業者のページにもあることを発見した。気になって調べたら、計10サイトに同じ顔が掲載されていたという笑えない例もあった。
滋賀県で国際結婚の紹介業「国際結婚1151チャイナウェディング」をしている岡崎寿史さんはホームページで、ブローカーについての実態を詳細に伝えている。
中国で日本の業者が国際結婚を希望する女性を探すのは難しく、現地のブローカに頼ることになる。実際にハルピン(方正県)で、日本の業者が自社で女性会員を募集しているのは、限られた数社しかないという。岡崎さん自身も最初は勝手が分からず、ブローカーを使った時期もあったが、トラブルが多く縁を切ったそうだ。
しかし、日本には、ハルピン(方正県)の女性を紹介している業者が含めて百以上、さらに個人レベルも含めれば1000を超えるともいわれている。そこで女性探しは、現地に人脈のある中国人ブローカーに頼ることになる。
結婚にはお金がつきものだ。紹介料が6万元(約85万円)以内であれば中国国内で結婚する場合と同額程度なので、常識の範囲内だが、ブローカーが女性から取る手数料は10万元(約140万円)が一般的なので、かなり高額だ。それを女性が借金という形で負担する。
方正県では親ブローカーの下に子ブローカーがいて、女性のプロフィールをを集めてくる。20人ほどの親ブローカーが日本の業者と業務提携を結んで、プロフィールを売る仕組みだ。その過程でプロフィールが勝手に美化されることも少なくない。それが後でトラブルを生み出す。

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「見せ金」商法

しかも、こういう美人と会えると思って現地に行ったら、「ついさっき別の男性と結婚が決まった」「風邪を引いて寝込んでいる」などと言われ、別の女性を紹介される「見せ金」商法もあちこちで報告されている。
高価格の日本人同士の仲介業者でも、最初こそ日本人同士のお見合いを行うが、うまく行かない、なかなか結婚できない男性には国際結婚を勧めることがある。
国内の例だが、富山県では、「呉縁(ごえん)倶楽部」の経営者らを特定商取引法(不実の告知)逮捕した。被害者の男性2人は約44万円の入会金を支払って入会したが、誰も紹介してもらえず、2人が解約を申し出ると、「中国人なら紹介できる」などと言われたと、新聞は伝えている。
全体的に見て、国際結婚業者を通じて成婚した場合の平均価格は170万円〜195万円だという。私が見た業者のホームページの料金表もだいたい200万円弱が主流だった。1件170万円は、採算ラインとも聞いた。これには、渡航して現地でお見合いし、結婚までの各種手続きの費用が含まれる。
月間5組以上の成婚実績が無ければ収支が合わないが、たいていの業者は月1組か、2組程度のところが大半だ。さらにここ数年、日本への情報が豊富になり、中国人女性も日本行きに慎重になっている。男性側も警戒し、なかなか結婚に踏み切らないという。
それでは、国際結婚はもうからない、割に合わない仕事なのか?そうではないと思われる。
顧客の不安を解消しながら、パートナーを見つけ結婚を実現すれば、いっぺんにまとまった額が入ってくる。適性のある人がやれば、かなりよい仕事になる。私の複数の知り合いは、そう本音を話している。
そうでなければ、200社とも言われる国際結婚業者はなりたたない。

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家庭内暴力で偽装

「片偽装結婚」の名付け親は、大手の結婚紹介業東京オニックスグループの石田洋司会長である。中国女性と日本人男性の婚姻は年間12000件にのぼる。半数は日本にいる中国人女性との結婚で、在中国女性が日本に入国する数は、年間約6000人になる。
石田さんは、「私の職業上の勘」と断った上で、中国から来る女性の半数の3000人の中国女性は、それなりに日本人男性とと結婚生活を送っているが、約2割、つまり1200人の女性は結婚を装った日本入国、つまり「片偽装結婚」目的で、男性が餌食になっていると話す。
女性側も、片偽装を追及されないようちゃんと手を打っている。その1つが、夫から家庭内暴力にあった、食事を食べさせてもらえなかったなどと、警察や役所に届け出ることだ。もちろん、本当にこういう被害にあっている女性もいるだろうが、これを隠れ蓑にしているケースもあるのは間違いない。
これで女性は、行政に保護されて男性から居場所の追及を受けることがなくなる。役所や警察が自分を守ってくれるからだ。そもそも夫婦間のことには誰も手出しできないし、したがらない。
システム的に、借金を完全になくすことは難しい。それならば、万が一女性が失踪した場合、補償しようという動きもある。
前述のオニックスと、京都の国際結婚業者「かりん551」の両社が、一定額のお金を積み立てた独自の保障制度だ。花嫁側の一方的事情により花嫁が来日しない場合は、支払われていた金額の100%を返金する。
正当な理由なく、花嫁が来日後6カ月以内失踪(家出)した場合は、支払われてた金額の50%(80万円)を返金するーとしているが、こういう取り組みはまだ少ない。

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