第1章 それぞれの事情[1]

@筆者:五味洋治プロフィール [ 2011年 6月 2日 ]

儒教が息苦しい - 韓国

ここからは、日本に来る外国人トップ3について触れてみる。まず韓国・朝鮮籍の女性。日本での国際結婚の3位に定着している。
韓国と言えばなんと言っても韓流ドラマだ。その中には仕事を持つ女性を主人公にしたものが多い。「チャングムの誓い」は人気女優、イ・ヨンエが、宮廷料理人の頂点を目指すヒロイン、チャングムを演じた。
儒教の国、韓国では、女性は家にいて、夫を助けるのが一般的だった。韓国では、いまだに妻を「チプサラム」(家の人)と呼ぶ男性がいる。
ただ最近は働く女性が増加、晩婚化と少子化が日本を上回るペースで進んでいる。韓国統計庁によると、2008年の結婚件数は32万7715件と、1年前に比べて4・6%減った。人口1000人当たりの結婚件数(6・6件)も0・4件減っている。
結婚年齢は年々上がり、2008年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数)を見ると、1・19人で、日本の1・37人よりも低く、先進国が集まる経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では最低となってしまった。


↑目次へもどる

高い教育熱があだ

晩婚化、少子化の原因について、識者は韓国の「教育費の高さ」を挙げる。韓国では学歴による差別が厳然と存在しており、いい学校を出なければ、よい就職、よい結婚もできないと信じられている。
韓国の報道によれば、ソウルでは平均的な中間層の家庭が払っている塾やおけいこごとといった学校以外の教育費は、子供1人当たり平均100万ウォン(約8万円)。大卒初任給は、日本円に直すと9万円といわれているのでかなりな負担であることが分かる。。教育費のうちの私費負担は、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、韓国が41・2%で平均の15・3%を大きく上回り1位を占めた。貯金も、旅行も我慢して塾代を出しているというのが実情だ。
もし、子供が女の子で、教育に回すお金が十分なく、高卒の学歴しかなければ、社会の最も下のランクに入れられ、そこから逃れるのは簡単ではない。
結婚を避けるの傾向は女性の方が顕著だ。2003年の調査だが、「結婚しないのは意識的なものか」との質問に、回答した女性の51・8%が「そうだ」と答え、男性の30・4%を上回った。高い学歴と仕事を優先する女性が増えていることを物語る。結婚した場合、女性が家事を負担することが多いため、できる限り先延ばしにしたいとの意識があるのは間違いない。
離婚件数は日本並みに増えているが、離婚すれば「戸籍を汚した」として家族、親族から白い目で見られる。社会の片隅で隠花植物のように生きて行かなくてはならなくなる。未婚で25歳以上になれば急速に結婚相手がいなくなり、「老処女」などと陰口をたたかれるようになる。そのため、比較的男女関係に自由な日本に来る女性が後を絶たない。
韓国人女性と再婚し、ソウルの中心部で土産物店を開いている平田敬一さん(64)は、「とにかく情が濃いね。いつも私に関心を払ってくれる。日本人の前の妻とは対話がなかったが、今はいつも一緒で、一日中話している。病気になった時には特に親身に世話をしてくれる。こいつが見守ってくれていれば、安心して死ねるって気持ちです」と本音を漏らす。平田さんは淡泊な性格だ。夕方、友達とソウルの町で一杯やるのが数少ない楽しみだ。
ただしと平田さんは言う。「今もなじめないのは身内や親戚に対する強い連帯意識です。従妹、ハトコまで家族として考え、付き合いを欠かさない。これは日本と韓国の根本的な考え方の違いなので、諦めるしかないようですね」とふたりの生活を話した。


↑目次へもどる

強い家族のつながり - フィリピン

フィリピンは世界でも有数の出稼ぎ大国だ。人口8000万人の1割に当たる800万人が海外で生活している。当然海外に嫁ぐ女性も多い、日本でも、フィリピン女性は、中国人女性に続く国際結婚の相手である。
フィリピン女性が結婚相手として選ぶ外国人をみると、日本人男性は、米国人男性に続く2位だ。フィリピンの国際結婚では日本が大きな位置を占めている。
フィリピンとと日本を比較する時、よく持ち出されるのが、「181」。
この数字が何を示しているかというと、最初が、日本人の中でまじめに働いている人、真ん中の数字が普通の人、最後が怠け者、この3種類の割合を指す。フィリピン人男性は「118」と言われるそうだ。日本はまじめな人間が多いと好意的に考えられている。
この話を教えてくれたのは、フィリピン人と結婚して20年になる茨城県の高校教師大杉誠さん(63)だ。「だからフィリピンの女性は、まじめに働いてくれそうな日本の男性なら、国籍や年齢、職業には関係なく結婚相手と考えてくれるんですよ」と言う。
国民の83%がカトリックの信者といわれる。日本では「南国の陽気者」「したたかな女性エンターテナー」という固定イメージで見がちだが、家族とのつながりを非常に大切にする。年を取った人は特に尊敬し、見ず知らずの人でも、家に入れて食事を振る舞うこともある。
ただ、本国フィリピンに残る兄弟、家族への仕送りを当然の義務と思うなど、日本人として違和感を覚える部分もあるようだ。

↑目次へもどる

「順応力が高い」の幻

1980年代にフィリピン女性は、山形県朝日村や大蔵村、徳島県東祖谷村に大挙嫁入りした。跡継ぎ不足解消のため、自治体あげての嫁探しが行われたのだ。
フィリピンに白羽の矢が立ったのは、日本から近く、300年以上植民地として支配されながら、その時々の征服者にうまく立ち回り、逆境に強い。順応力が高いとみられたためだ。
当時の新聞報道を読むと、日本ではフィリピン人をこう見ていた。「多民族国家なので、外国に嫁ぐことに抵抗がない。フィリピン人には日本人の人情が通じる。家族愛、隣人愛が強い」
皮肉にもこの情の強さのために、日本に来た後、家庭で1人でいることに苦しむ人が多かった。故郷に毎日長距離電話をしたり、フィリピン人の仲間を求めて都会に出たがる傾向が強かった。
千葉県に住む会社員の中松敦さん(55)の奥さんは、「日本流の淡泊な付き合い」が好きなので、夫としての負担は少ない。ただ、「本国の両親が一番大切」という考えは強く、将来日本で暮らすか、フィリピンで暮らすかが一番の問題となっている。
妻は帰国するのが願いだが、夫は生活上の不安を感じている。
子供がいないため、妻は、夫が仕事に出ると寂しさに耐えられなくなる。同じ県内にある成田空港にまで出かけ、フィリピンからの飛行機便を待って、降りてくる同じ国の人たちに話しかけていた。「とにかくフィリピンの匂いが恋しかった」と奥さんは話す。
相手がフィリピン人なら簡単に信じてしまい、大金を貸して持ち逃げされたことも数回あった。当たり前のことだが、表面的には明るい彼女たちも、「順応力が高い」と簡単に片づけられない複雑な心理を持っている。


↑目次へもどる

初めての国際結婚で相談!
これだけは気をつけよう!悪徳業者の見抜き方
国際結婚を失敗しないために国際結婚を失敗しないために
特定非営利活動法人(NPO法人) 国際結婚協会
お気に入りに登録
国際結婚協会では
CO2削減に貢献しています
チーム・マイナス6%
岡村国際法務事務所

↑ページトップへ