国際結婚・国際離婚の「いま」・・・(序章)
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国際結婚・国際離婚の「いま」・・・(序章)
国際結婚
ちょっと身の回りを見回してほしい。隣近所や会社の同僚の中に、外国人の奥さんを持っている人はいないだろうか。
「なかなか自己主張が強くて謝らない」
「昔の日本人みたいにがんばり屋だ」
「外国から来た奥さんと話すきっかけを作りたいが、どうすればいいのか」
などと戸惑い半分で話題になっているかもしれない。今日本には、年間一万人以上の外国人女性が日本に嫁いでいる。もう珍しくない存在になってきている。
私も縁があって40代半ばになって中国人女性と再婚した。私の人生の中で最大のイベントといっても間違いではない。2人で暮らす喜びを感じたことも多かったが、考え方の違いから戸惑ったり、苛立ったこともあった。
その体験を基に、これから外国籍の女性(もしくは男性)と生活を共にしようと考えている人たちに、結婚までのプロセスや、彼女たちの生活様式、考え方また共に暮らす上でのノウハウをレポートしたいと考え、今回国際結婚協会のご厚意で、ホームページにスペースをいただくことになった。
日本では外国人とか移民政策というと、徹底した排斥論か、もしくは労働力確保や人口減少の特効薬として、どんどん受け入れるべきだといった両極端な議論に陥りやすい。特に中国に対しては、その強硬な外交姿勢から、警戒論が強い。中国人が日本人と結婚し、日本国籍を取って選挙権を手にすれば、日本はそのうち中国に乗っ取られるという人もいる。
しかし、考えていただきたい。彼女たちが日本に来るのは、間違っても政治的理由ではない。経済発展最優先で、貧富の差が広がるばかりの祖国を捨て、清潔で安心できる日本を選んだのだ。
ちょっと俗っぽくいえば、外国の若い女性たちの中には、「日本のくたびれかかった中年おじさん」を結婚相手と考えてくれる人がいる。彼女たちは、少子化や孤独死を救ってくれる救世主になるかもしれない。世界の今を教えてくれ、ビジネスチャンスを作ってくれる可能性もある。海外の情報に自由に接することができない国の人たちが、日本の親戚の家を訪問すれば、両国の友好にどれだけ役立つか分からない。
逆に明治時代以降、国際化が叫ばれながら単一民族指向で来ていた日本が、今度こそ世界に開かれていく、ささやかな一歩にもなる。
彼女(彼)たちがもたらす、これらの「福」は、案外無視できない。
のちのち紹介するが、言葉の壁を乗り越え、事業を興して、実業家としてたくましく生きている人たちもいるが、家に引きこもり、毎日パソコンで本国の友人とチャットに没頭してしまう人も少なくない。日本語と外国語が混ざった環境の中で育つ子供のサポートも課題になってきている。結婚移民を受け入れる日本の社会的システムは、韓国などに比べても不十分なままだ。
日本は現在、単純労働者として入国することは難しい。このため結婚を隠れ蓑にして、日本に入国するケースが後を絶たない。
2007年に限っても、日本人同士の離婚率35%に対して、日本人夫、中国人妻の夫婦の離婚率は42%。半数近くが離婚している計算になり、離婚のリスクは高い。
それでも私は、中国をはじめたくさんの外国人女性、男性に日本に来てもらいたいと思っている。そして日本を変えてほしい。私は人口学者でも、移民政策の専門家でもないが、せっかく日本に来た外国人たちを迎え入れるにはどうすればいいか、この欄を通じて考えたいと思っている。
私は男性であり、中国人と結婚しているため、その視点で文章をつづることになる。できるかぎり、外国人男性と結婚した、もしくは結婚を考えている女性の立場からもレポートしたいと考えている。
この文章は書籍化を前提に2008年から2011年まで私が直接取材した内容をまとめたものだが、今回国際結婚協会のご配慮で掲載させていただいた。関係の方に深く感謝したい。
また私は、新聞社に勤務しているが、ここに書いた内容は、職場や仕事とは関係ないこともあらかじめお断りしておく。
内容等についての問い合わせなどはすべて筆者gomisoko@gmail.comへ。
国際結婚とは
本論にはいる前に、国際結婚全体の流れや背景について触れておきたい。いきなり中国から多くの女性がくるようになったのではない。数字ばかりになるが、ざっと頭にいれていただければと思う。
戦後の日本の国際結婚は大きく3期に分けられる。最初は1965ー90年までで、在日韓国・朝鮮籍の女性との結婚が多く、1992年まではトップの座にあった。第2期は1991ー95年、フィリピン妻が増えた時期に当たる。その後の主役は中国人となる。
日本での中国人妻の増加を裏付ける数字がある。日本の厚生労働省が2008年9月に発表した「人口動態統計」によると、2007年(平成19年)の日本の婚姻件数は71万9822組で、うち国際結婚が4万322組。約18組に1組が国際結婚という計算になる。特に都会では10組に1組となっている。
日本人男性と結婚する中国人女性は年間12000人でトップだ。これは1週間に230組がゴールインしている数字となる。さらに両親か、どちらかが中国人という中国系の子供は140人に1人を占めているという数字もある。
国際結婚は最初に農村で急速に広まった。ヨメ不足解消のためで、好奇心と批判にさらされ、結局中断された。しかし、日本の少子化と男性の未婚率の増加によって、農村だけではなく日本全体の問題になってきている。
中国系メディアは、日本社会にとっての中国人妻の役割について(1)出産に積極的(2)過疎化を食い止める農村の労働力(3)日中交流の橋渡し役(4)父母を敬う中国の伝統が日本の家庭の絆強化にプラスーなどがあると伝えている。まるで、日本を救うのは中国人女性と言いたいようだ。確かに日本では明治時代から始まった人口減少が、予想よりも早く2007年から始まり。50年後の人口は現在の3分の2に。さらに100年後には4000万人になると予想されている。日本の国の存亡にかかる大問題である。
一方で「無縁社会」も広がっている、「引き取り手がなく、自治体によって火葬・埋葬された人」が年間3万2000人(2008年調べ)になっているとの一部報道は、社会に衝撃を与えた。
独身のまま高齢を迎える「男おひとりさま」の助け船として、外国からの奥さんを考えてもいいのではないかと思う。
外国人激増の時代
国際結婚をめぐる最新の数字を見てみよう。2007年の結婚総数は約72万組で、夫婦のいずれか片方が外国籍、すなわち国際結婚は4万組強だった。約5・6パーセントとなり、約18組に1組に当たる。2006年が4万4701組で約6・1パーセントと数・率とも過去最高だったのに比べるとやや減少した。
妻が外国籍である国際結婚は3万1807組。夫が外国籍である国際結婚は8465組。夫が日本人の夫婦が4対1の比率で多い。
妻が外国籍の国際結婚では1位中国、2位フィリピン、3位韓国・朝鮮。1997年以来、中国人はほぼ毎年トップとなっている。
ちなみに、夫が外国籍の国際結婚では1位韓国・朝鮮、2位アメリカ、3位中国の順である。
入国管理局が発表する外国人登録者数でも中国人の台頭ぶりは明らかだ。
2007年末現在の数の外国人登録者は215万2973人で、過去最高を更新し、総人口の1・69パーセントとなった。
国別では中国が60万6889人、韓国・朝鮮が59万3489人、ブラジルが31万6967人、以下フィリピン、ペルー、米国の順になっている。はじめて中国が韓国・朝鮮を抜いて第1位となったことに世間の注目が集まった。
「日本人の配偶者等」の資格で登録している外国人登録者は25万6980人で、ブラジルが6万7472人、中国が5万6990人、フィリピンが5万1076人だった。「配偶者等」の中には、日本人と婚姻した者だけでなく、日本人の特別養子、日本人の子として外国で出生した者も含まれている。こう見ると、日本に住む外国人は、かつての韓国・朝鮮からフィリピン、ブラジル、中国に急速にシフトしていることが分かる。
日本への観光客という点でも、中国は大きな市場になっている。日本政府観光局(JNTO)は7日、中国の個人観光ビザ制度が創設された2009年7月以降、3カ月でビザの給付を受けた中国人が4435人となったと明らかにした。特に富裕層を多く抱える上海総領事館の発給が半数を超えている。中国人との接触の機会が拡大しているのだ。