第4章 結婚を仲介する人々[1]

@筆者:五味洋治プロフィール [ 2011年 7月 15日 ]

「ワンちゃん」が伝える業者婚

楊逸さんは、芥川賞を取った中国出身の作家である。
ハルビン生まれで、日本語で小説を書いている。それだけでも驚きだが、日本人より上手に日本語を操る。
彼女の作品の中に「ワンちゃん」という題の短編がある。
王(ワン)愛勤という中国女性の物語だ。中国で、浮気した夫と離婚し、再婚して日本の四国に来た。旦那にすがらず生きようと、中国人女性と日本人男性を結びつける仕事を始める。国際結婚ブローカーである。もっとも「ブローカー」では響きが悪いので、最近はサポーターとも呼ばれる。
それはいいとして、小説の中で描かれた彼女の仕事はけっこう順調だ。6人の日本人男性を連れて中国に行き、11人の女性とのお見合いを実現した。
うち5人は結婚する相手を決めてくれた。彼女の仲介料は「1人最低で15万で、計75万円が入る」だ。
この料金は、今はやや高くなっているかもしれない。いや、広告も営業もなく、おばちゃん1人でやっていれば、こんなところだろうか?
その中の女性1人の、日本への入国ビザが下りない。旦那と年齢が離れすぎているからだという。実際、男女の大きな年齢差はビザ拒否の有力な理由になっている。
なぜ中国の女性が日本行きに憧れるのか?小説の中に出てくる女性たちの言い分が面白いので引用しておこう。
「彼女たちは大抵日本の恋愛ドラマの見過ぎで、日本なら何処でも賑やかで現代的な町で、高級マンションに住んで、旦那が仕事に行っている間に、自分が高級アクセサリーをつけて、オシャレな服を身にまとい、大きなデパートに行ったり、エキゾチックな洋風カフェで友人とお茶をしたりできるものと思いこんでいた」
しかし、現実に住む場所は田舎で、農作業に追われ、夢に破れてしまうケースが少なくない、と説明している。
中国本土の人たちが、日本のドラマを見ているのは事実だ。私の妻の話も小さいころ、いつも中国のテレビで放送された山口百恵のドラマを見ていたという。そこに出てくる街の様子、それと特に新幹線に憧れたという。最新の日本ドラマは中国では放送されていないので、かなりな人が1970年代の百恵ドラマを見て、そのイメージを引きずっている。

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国際結婚サポートの手順

ホームページを持ち、中国の女性と日本の男性をマッチングする業者は、日本に200以上あると言われている。大半が家にパソコン1台という零細企業が多く、ホームページを作って客を集める。口コミだけでやっている人を含めれば600とも1000ともいわれる。8割程度は中国人女性が対象だが、ロシア、ウクライナ、インドネシア、ミヤンマーなど対象は拡大している。
経済産業省のサービス産業課が管轄省庁だ。結婚紹介業は、エステ、外国語教室、家庭教師とならんで消費者からの苦情の多い5業種である「特定業種」と呼ばれる。
雑なサービスをする業者の影響もあり、国際結婚自体も全体的に結婚成立が難しくなっているとの指摘もある。
業者のホームページには、若い中国人女性のポーズ写真が並べられ、「新会員さんが入りました」などのうたい文句とともに、簡単なプロフィールが紹介されている。
基本的に女性はみな若い。20代から30代だ。中国東北地方の人が大半である。業者は、関心を持って問い合わせてきた男性からプロフィールと写真を預かり、女性側に打診する。女性側もOKとなったら、男性が中国に出向き、お目当ての女性を含む数人と会って、交流する。つまり、お見合いだ。
男性はいったん帰国する。結婚したいと考える女性がいた場合、さらに二カ月程度、日本から電話、メール、手紙などを交換して理解を深める。最近では「スカイプ」と呼ばれるパソコン上の無料通話ソフトがよく使われている。
この過程がないと、日本の入国管理局は「偽装結婚」を疑い、日本への入国許可を下ろさない。たいてい女性は日本語ができないので、通訳が間に入ることになる。女性も結婚に同意すれば男性が再度中国に行き、結婚式を挙げる段取りだ。

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なかなか下りなくなった許可

具体的にはどう進めるのか、少し詳しく書いてみる。
まず女性が、地元の役所で独身証明書を取り、現地で結婚式を挙げ、結婚届けを提出する。受け付けられると、結婚証明書が発行される。これに将来の妻になる女性の国籍証明書も入手して男性は帰国し、今度は日本の地元の市町村役場に結婚届けを提出する。さらに、入国管理局に妻の在留許可申請を行う。
在留資格は「日本人配偶者等」である。業界では略して「日配(にっぱい)」と称する。資格が認められると、奥さんが、その在留資格証明書を持って中国内の日本大使館や領事館などでビザ申請をする。
日本の入国管理局は、男女間の年齢差、訪中回数、交際の内容などをチェックし、だいたい2カ月程度で結果が出る。ビザが下りれば、日本に来ることができる。
この関門をパスし、入国できたら、今度は地元の役所で外国人登録を行う。ここまでくれば、比較的簡単だ。パスポートと顔写真をそえて役所に申請する。運転免許証大の証明書のカードが発行され、住所や夫の名前が証明される。これさえあれば、日本で仕事がかなり自由にできるようになる。これで一連の手続きは完了である。
在留資格は1年、もしくは3年に1回、延長を申請する必要がある。「日本人の配偶者」を持つ外国人の場合、日本に、1年以上住み、婚姻申請してから3年以上であると「永住権」の申請ができる。永住権が認められると、さらに身分は安定する。

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